NHK Eテレ「世界の哲学者に人生相談」 第12回「老いていく自分がいやになる」
患者と向き合った経験から得た年を重ねる心構えを説く.
ユングは
午前の法則を 人生の午後に引きずり込む人は 心の損害という代価を 支払わなければならない
午前から午後へ移行するとは 以前の価値の"値踏みの仕直し"である
と述べます.
ここで言う正午とは,40歳前後のこと
午前の目的は,仕事・地位・子育て
午後の目的は,自分の内面を見つめること
今回の思考実験は友情について
アリストテレス の友情論は友情を3つに分けた
- 有用ゆえの友情
- 快楽ゆえの友情
- 相手のために善を願う友情
3の友情までには時間がかかる,そして,自分に徳がないとダメ
カンニング竹山さんの悩み 「日ごろからイライラしてしまう」
高校教師をしながら活動し,『幸福論』を著したフランスの哲学者アラン(1868-1951)
アランは怒りについて
もし咳がでても その悲劇を 最初の段階だけにとどめておけたら トローチはいらないだろう
という.
咳とは,怒りのこと
三木清(1897-1945)48年の生涯で多くの著作を残した『人生論ノート』は不朽の名作
三木は
怒りを避ける最上の手段は 機智である
という.
機智とは,wit,ユーモア,皮肉,とんちのこと
NHK Eテレ「世界の哲学者に人生相談」 第11回「人の目が気になる」
第11回「人の目が気になる」1
「世間の目が気になる」(33歳 女性)
世間の評判が気になって苦しいという悩み。
20世紀イギリスの哲学者・数学者「幸福論」の著者でぶれない生き方を貫いた哲学者 バートランド・ラッセルが「世評」にまつわるお考えを提示する.
ラッセルは,
世評とは世評に無関心な人よりも世評を怖がっている人に対して暴虐である
という.
ラッセルが言いたかったのは,私たちの態度によって世間は顔を変えるということ.
そして,
突飛な意見を持つことを恐れるな 今日認められている意見は皆 かつては突飛だったのだ
ともいう.
常識に反することを言うのを恐れるなという意味.
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萬田久子さんの悩み「愛犬の死が怖い」
ドイツの哲学者で愛犬家・ショーペンハウアー(1788-1860)は
動物の方が我々よりもはるかに多く 単なる現存在のうちに満足を見出している
という.
動物の方が我々よりもはるかに多く 今に満足を見出している という意味.
- 作者: ショーペンハウアー,橋本文夫
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1世紀に活躍した古代ローマの哲学者・セネカは
われわれの享ける生が短いのではなく われわれ自身が 生を短くする
という.
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NHK 世界の哲学者に人生相談 第10回「いやな記憶に向き合う」
第10回「いやな記憶に向き合う」1
「過去の嫌な記憶 忘れることができない」(44歳 女性)
この悩みにフランス19世紀後半の哲学者・アンリ・ベルクソン(1859-1941)が考えを示す.
ベルクソンは,人の意識,時間,自由,心身の関係を説いた,生命の哲学者の元祖.
当時は,近代化が急速に進み,科学が進歩する.
ベルクソンは,都合の良い結果だけ発表し,わからないことにはフタをする,科学の姿勢を批判.
特に,時間の概念に噛み付いた.
1時間は60分 1日は24時間と時間を区切ったことで,人は時間に支配されて窮屈になってしまったと論じた.
ベルクソンは,時間は体感する記憶によって変化していると考え,
あらゆる知覚は すでに記憶なのだ
と言う.
ベルクソンの言う知覚は,暑い,痛いなどの身体の感覚と,ツライ,悲しいなどの心の感情まで含めている.
何かを見た(知覚した)ときに,すでに記憶がその何かに影響を与えている,というようなイメージ.
知覚が過去の記憶に左右される.
記憶を呼び起こすこととは 想像することで 回想することではない
とも言う.
回想することではない とは,単に過去の事実を思い返すことではない ということ.
過去の事実を思い返すたびに知覚も混ぜ合わされる.
記憶は時と共に上塗り,更新され,肥大化する.
これが,記憶を呼び起こすこととは 想像することで 回想することではないということ.
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磯野貴理子さんの悩み
「心配しすぎな自分。能天気になりたい」
古代中国の哲学者・孔子(紀元前552-479)の考えが示される.
孔子は,より良い人間関係を築くための道徳的な考え方を説いた.
儒教とは,人が生きるために大切な道徳的 教訓.
五徳(仁,義,礼,智,信)を積むことが人間関係を築くために必要だと説いた.
儒教の経典の1つ『論語』には孔子の教えがわかりやすくまとめられている.
孔子は,いつも3回考えて行動に移す心配性な役人に対し
再びせば 斯れ可なり
と言う.
2回考えればちょうどいい,という意味です.
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すべては偶然に支配されている
と言う.
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NHK Eテレ「世界の哲学者に人生相談」 第9回「同級生に感じる劣等感をどうにかしたい」
第9回「同級生に感じる劣等感をどうにかしたい」1
「同級生に劣等感 同窓会に行きたくない 」Aさん(40代 女性)
劣等感を人生に前向きに活かすにはどうするか.
劣等感に向き合うといえば,20世紀初頭に活躍した勇気づけの哲学者アルフレッド・アドラー(1870-1937)
アドラーは,30代の頃オーストリアで内科医を営んでいた.
当時,アドラーのもとには近くで働くの遊園地で働くサーカス芸人が患者として訪れていた.
彼らの多くは幼いころ,貧しい生活をおくり,身体が弱かったという.
ここでアドラーはあることに気づく.
彼らは貧しさをバネに体の弱さを克服してハードな仕事をこなしている.
このサーカス芸人のように無意識のうちにマイナスの境遇からプラスの境遇に向かおうとする力,それこそが劣等感だと考えた.
後に精神科医として活躍したアドラー.
劣等感を抱く患者に繰り返し伝えた考えがある.
それは
劣等感は誰もが持っている それは健全な向上心のきっかけになる
悪い劣等感は"他者との比較"から生まれる 良い劣等感は"理想の自分"から生まれる
と,アドラーは言う.
アドラーは劣等感に,悪い劣等感と良い劣等感の2種類あると考えた.
アドラーに言わせると,"他者との比較"を止め,"理想の自分"を追求し始めると,良い劣等感になる."他者との比較"から悪い劣等感が、"理想の自分"との比較から良い劣等感が生まれるという.
理想の自分=好きな自分を追求し始めると,良い劣等感が生まれ,それは健全な向上心のきっかけになる.
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ゲストのお悩みは河北麻友子さんの
「悩みがないのが悩み」
17世紀に活躍した哲学者ブレーズ・パスカル(1623-1662)
偉大な物理学者,数学者でもあり,パスカルの原理を発見・「ヘクトパスカル」の由来.
ただし,18歳の頃からいくつかの病気に悩まされ自分自身も悩みを抱えながら考えて生きてきた人.
パスカルは
人間が惨めであることを知るのは偉大であることなのであること
という.
人間が惨めであることを知る,とは,悩みがある,ということ.
ゆえに,悩みがあるのは偉大なことだとパスカルは考えた.
パスカルは徴税官の仕事が大変だった父の「悩み」に対して,解決するため計算機を発明した. 悩むことはステップアップに繋がるから良いことである.
一方,「幸福論」で有名なアラン(1868-1951)
は
苦悩はため息である
と述べる.
ため息(=苦悩)は,息をためて吐く状態
その状態は正常な状態ではない.
だから,悩むことは良くない.
悩まず前向きに生きましょう,という
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NHK Eテレ 世界の哲学者に人生相談 第8回「憎しみを抑えたい」
「人を憎んでしまう」どうすればいい? (55歳 女性)1
感情を徹底的に分析したフランスの哲学者デカルト(1596-1650)
デカルトはもともと頭で考えること,つまり理性こそが人間にとって大切だと考えていた.
しかし,デカルトは,戦争に巻き込まれヨーロッパ中を転々としていた悲劇の王女・エリザベトとの往復書簡によって,感情こそが人間にとって大切であり,愛と憎しみが人間にとって最も根本的な感情という考えに至る.
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デカルトは,
"憎しみ"と"愛"は表裏であり もともと"同じもの"である
自分の想像に騙されず 憎しみの反対の理由も考えよと述べる.
自分の想像に騙されず 憎しみの反対の理由も考えよ とは,なぜあの人はあんなことをするのか?という理由を,違った視点で考えよという意味.
思考実験では良心を考える.
良心 conscience の con は共に science は知る
なので,良心 conscience は,共に知る という意味.
良心は,誰かにこれは良い?と一瞬聞いているのだ.
ゲストのお悩みは池田美優さんの「母親が子離れしてくれない」
近代ドイツの生の哲学者ショーペンハウアー(1788-1860)は 人との距離は近すぎず遠すぎずという.
『法の哲学』の中で,家族や親子のあり方を説いたドイツのヘーゲル(1770-1831)は
子供は他人にも両親にも物件として所属するものではないという.
物件とは物のこと.
近代の社会,ヘーゲルの時代は,子供は親の所有物でありで労働力という発想があった.
ヘーゲルは,家族とは社会の一部であり,けして閉じていてはいけない.社会とお互いにつながり,関連しあっていなければならないと考えた.
そして,親の使命は子供を独立させ,社会に送り出すことだという.
宇宙を支配する数式リング
阪大の公式グッズに「宇宙を支配する数式リング」なる,素晴らしく厨二病感溢れる指輪がある.
しかし,阪大の生協でしか買えないらしく,買うために大阪行くのはちょっとなぁと思っていた. やっとAmazon で発売したと聞き,早速ポチった.
- 出版社/メーカー: OUコープ
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[「宇宙を支配する数式リング」が売れると]非営利組織である阪大生協の売り上げの一部は阪大に寄付され、それが全学で研究目的にも使用されているから、間接的には科学の発展に関係する https://twitter.com/hashimotostring/status/1002110230644207616
ということなので,科学の発展に僅かながら貢献できるのも嬉しい.
NHK Eテレ「100分 de 名著」神谷美恵子『生きがいについて』第4回 人間の根底を支えるもの
- 作者: 神谷美恵子,柳田邦男
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「生きがい」の問題を考えぬいていくとき、ひとはいつしか「宗教的なもの」に近づいていく。それは決して既成宗教や宗派の枠にとらわれるものではない。それを神谷は、教義や礼拝形式などの形をとる以前の「目に見えぬ人間の心のあり方」と呼ぶ。神谷は、困難に直面している人々と対話する中で、彼らが、自分を超えたより大きなものに生かされていると感じており、自己をあるがままに大きな力にゆだねることで、困難に立ち向かう力を得ていることに気づくのだ。第四回は、神谷美恵子が「生きがいについて」後半でたどりついた独自の「宗教観」を読み解くことで、「人間の根底を支えるものとは何か」を考えていく。 名著76 「生きがいについて」:100分 de 名著
神谷がこの本の中で「生きがい」を告げ知らせるものは大きく分けて3つある
- 人
- 言葉
- 自然
「変革体験」は「気づき」「目覚め」のような簡単な言葉に置き換え,人生を根本から変えるような体験のこと
変革体験を経て,生きがいを見いだす
変革体験は使命感を伴っている.つまり生かされていることへの責任感
生かされていることへの責任感=自己の生が大きなもの[天,神,宇宙,人生]に必要とされている.それに対して忠実に生き抜く責任がある.
変革体験とは大きなものに生かされているという「発見」 この発見が使命感につながる. この時,人は生きがいに目覚めると神谷はいう
素朴なことの中に壮大なものが潜んでいるのが「変革体験」
身近な経験を深めていくことは「生きがい」を見いだしていくこと
神谷は,長島愛生園で暮らす近藤宏一さんに影響を受けた.
- 作者: 近藤宏一
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生きていてよかったという実感
人は自分で生きているのではなく,人々とのつながりの中で生きている.つまり,つながりに生かされている
神谷はハンセン病の人々の中に,既存の宗教や宗派に固定されない,生きた「宗教」があることを感じた.それが,人間の根底を支えていることに気づく.
自分をとりまく大きな力の中に自己を発見していく.その道のりにこそ「生きがい」は見いだされる.
- 作者: 神谷美恵子他
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2004/10/06
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- 作者: 神谷美恵子
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