設計によるセレンディピティ

"The world around you is not what it seems."

NHK Eテレ 世界の哲学者に人生相談 第13回「人を妬んでしまう自分が嫌になる」

第13回「人を妬んでしまう自分が嫌になる」1

「他人を妬んでしまう 腹黒い自分」(47歳 女性)

19世紀ドイツ,聖職者の名門家系に生まれたニーチェ

ツァラトゥストラ』の中で,いかに負の感情を乗り越えるかが書かれる.

ニーチェ
祝福することのできない者は 呪詛することを学ぶべきだ
という.

ルサンチマンとは,いい人ぶって負の感情をため込むこと
妬んでいる自分を良い人とつくろわず,悪人になって全てを吐き出すべきという

人間は動物と超人の間に張り渡された一本の綱である

超人は超えた人ではなく,超えていく,越えようとする人.他者の価値観や世間体に縛られず,自分の価値観で目標を決めて突っ走れる人.

超人を目指すという事は,ルサンチマンに陥らない処方箋である.

ツァラトゥストラはこう言った 上 (岩波文庫 青 639-2)

ツァラトゥストラはこう言った 上 (岩波文庫 青 639-2)


思考実験は現代の社会が問われている「寛容」がテーマ
啓蒙主義の哲学者「人間は間違う動物 寛容であれ」と説いたヴォルテール(1694-1778)
寛容でないと社会は成り立たない.

寛容論 (中公文庫)

寛容論 (中公文庫)


ゲストの悩みは鈴木砂羽さん

「一度悩むと負のスパイラルに落ち込み、抜け出せない」

フランスの哲学者パスカル(1623-1662)は,
想像は途方もない見積もりをして 小さな対象を われわれの魂を満たすほどまでに拡大する
という.

快楽主義~「心の落ち着き」について説いたエピクロス(紀元前341-270)は
明日を最も必要としない者が 最も快く明日に立ち向かう
という.

快楽主義=エピキュリアン

パンセ (中公文庫)

パンセ (中公文庫)

エピクロス―教説と手紙 (岩波文庫 青 606-1)

エピクロス―教説と手紙 (岩波文庫 青 606-1)

BS1スペシャル「欲望の時代の哲学~マルクス・ガブリエル 日本を行く~」の中でのマルクス・ガブリエル氏の発言をまとめます.

BS1スペシャル「欲望の時代の哲学~マルクス・ガブリエル 日本を行く~」の中でのマルクス・ガブリエル氏の発言をまとめます.1

もちろん21世紀ではアイデアは経済システムに取り込まれます.
この時代において何かを表現したいならば たとえば哲学を生き残らせたいならば時代にあった表現を見つけなければなりません.
それが21世紀のゲームです.
そこで戦わなければ考えを人に伝えることはできません.


石黒浩教授との対談

ドイツ憲法の最初の1文にはカントによる人間の解釈があります.
「人間の尊厳を不可侵である」とね.
「人間の尊厳」はカントが与えてくれたコンセプトです

ドイツなら「人間の定義」こそが基本.
ドイツの第一次・第二次世界大戦の失敗は「非人間化」のせいだったという見方が定着しています.
強制収容所は非人間化の果てです.
だから確固たる人間の概念が必要なのです.
人間の概念が揺らげば次に待ってるのは強制収容所だからです.
絶対に「人間とは何か」に疑いを持ってはならないのです.
「決して繰り返すな」と思ってます.

石黒浩教授「ドイツ人はみんな基本的なドイツ哲学を共有しているということでしょうか?」

全くその通りです.ドイツ人は観念論で統一されているのです.
私たちには「見えない皇帝」がいます.哲学がドイツの「見えない皇帝」なのです.

(撮影スタッフ?)「技術の進歩が人間性を損なうのですか?」

いいえ.全くそうではないと思います.
人間性はその度合いが減ったりするようなものではありません.
人間性とは すなわち動物であることです.
人間という種は本質的に10万年間は変わっていないのです.
だが技術によって我々の自己像は変わる.
動物であることは変わらなくとも技術の進歩への適応は自己認識を変えてしまうのです.
つまりロボットを通して自分たちを理解するようになりました.
それが私たちの倫理と行動様式を変えてしまうのです.
それは民主主義の土台が揺らぐということです.
コンピューターによる社会の支配につながりかねません.
それが気がかりです.
今のところ日本社会はまだ民主的ですがしかし民主主義は脅かされている.
「動物としての自己像」が脅かされているからです.
正しいかはわかりませんがこのような見方があることを伝えておきます.


nyx『ポストモダン以降の思想』取材

千葉雅也「あなたの議論はある種,ヒューマニティーを擁護する議論というふうに見えるのですがそのことについてはどう思いますか?」

私は一貫して自然主義に反対しています.
自然科学は最高の知識の1つですがあくまでも1つの知識に過ぎません.
自然主義は気象変動と同じくらい危ない.
つまり自然主義は私たちの時代の1番の知的な病.


「存在」と「真実」は区別すべき.
現代の情報社会を表すならば「ポスト真実」ではなく「モア真実」だと思います.
残念ながら「モア真実」における真実の多くは間違っています.
人々は間違った信念を持つようになっている.
ネットでは誤った信念をもとにした情報が増殖しています.


千葉「本当に「多元的な」状況において共同体を作ることや合意形成はどのように可能か?もし世界が存在しないのならば」

まさに「全体」がないからこそ重なり合いが成立する.
全ての構造はローカルなもの.
だから重なり合うことができる.
何も問題ない.
私の考えは西田幾多郎に近いと そういう印象を受ける人もいるようです.


M.Gabriel at KYOTO U マルクス・ガブリエル氏 京都大学講演20182

なぜ私たちは文字が読めるのに哲学的には考えなくなっているのでしょうか.
答えは簡単です.
私たちは過ちを犯しています.


番組の最後に

日本に張り巡らされた社会の網の目は窮屈かもしれない.
だがそこにある見えない壁(ファイアウォール)を乗り越えないといけない.
日々 家族でも友人でも冷笑的で反民主的な態度に出会ったらノーと言おう.
みんなと違っても言おう.
「自由」に考えることに最上の価値を置くべきです.

なぜ世界は存在しないのか (講談社選書メチエ)

なぜ世界は存在しないのか (講談社選書メチエ)

神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Νύξ叢書)

神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Νύξ叢書)

NHK Eテレ「世界の哲学者に人生相談」 第12回「老いていく自分がいやになる」

第12回「老いていく自分がいやになる」1

老いることが怖い」Aさん(44歳 女性)

思想家・精神科医でもあるユング(1875-1961) 患者と向き合った経験から得た年を重ねる心構えを説く.

ユング
午前の法則を 人生の午後に引きずり込む人は 心の損害という代価を 支払わなければならない

午前から午後へ移行するとは 以前の価値の"値踏みの仕直し"である

と述べます.

ここで言う正午とは,40歳前後のこと
午前の目的は,仕事・地位・子育て
午後の目的は,自分の内面を見つめること


今回の思考実験は友情について

アリストテレスの友情論は友情を3つに分けた

  1. 有用ゆえの友情
  2. 快楽ゆえの友情
  3. 相手のために善を願う友情

3の友情までには時間がかかる,そして,自分に徳がないとダメ

ニコマコス倫理学〈上〉 (岩波文庫)

ニコマコス倫理学〈上〉 (岩波文庫)

ニコマコス倫理学〈下〉 (岩波文庫 青 604-2)

ニコマコス倫理学〈下〉 (岩波文庫 青 604-2)


カンニング竹山さんの悩み

「日ごろからイライラしてしまう」

高校教師をしながら活動し,『幸福論』を著したフランスの哲学者,アラン(1868-1951)

アランは怒りについて
もし咳がでても その悲劇を 最初の段階だけにとどめておけたら トローチはいらないだろう

咳とは,怒りのこと

幸福論 (岩波文庫)

幸福論 (岩波文庫)

三木清(1897-1945)48年の生涯で多くの著作を残した『人生論ノート』は不朽の名作

三木は
怒りを避ける最上の手段は 機智である

機智とは,wit,ユーモア,皮肉,とんちのこと

人生論ノート (新潮文庫)

人生論ノート (新潮文庫)

NHK「世界の哲学者に人生相談」 第11回「人の目が気になる」

第11回「人の目が気になる」1

「世間の目が気になる」(33歳 女性)

世間の評判が気になって苦しいという悩み。

20世紀イギリスの哲学者・数学者「幸福論」の著者でぶれない生き方を貫いた哲学者 バートランド・ラッセルが「世評」にまつわるお考えを提示する.

ラッセルは,
世評とは世評に無関心な人よりも世評を怖がっている人に対して暴虐である という.

ラッセルが言いたかったのは,私たちの態度によって世間は顔を変えるということ.

そして,
突飛な意見を持つことを恐れるな 今日認められている意見は皆 かつては突飛だったのだ ともいう.

常識に反することを言うのを恐れるなという意味.

ラッセル幸福論 (岩波文庫)

ラッセル幸福論 (岩波文庫)


萬田久子さんの悩み「愛犬の死が怖い」

ドイツの哲学者で愛犬家・ショーペンハウアー(1788-1860)は
動物の方が我々よりもはるかに多く 単なる現存在のうちに満足を見出している という.

動物の方が我々よりもはるかに多く 今に満足を見出している という意味.

幸福について―人生論 (新潮文庫)

幸福について―人生論 (新潮文庫)

1世紀に活躍した古代ローマの哲学者・セネカ
われわれの享ける生が短いのではなく われわれ自身が 生を短くする という.

生の短さについて 他2篇 (岩波文庫)

生の短さについて 他2篇 (岩波文庫)

NHK 世界の哲学者に人生相談 第10回「いやな記憶に向き合う」

第10回「いやな記憶に向き合う」1

「過去の嫌な記憶 忘れることができない」(44歳 女性)

この悩みにフランス19世紀後半の哲学者・アンリ・ベルクソン(1859-1941)が考えを示す.

ベルクソンは,人の意識,時間,自由,心身の関係を説いた,生命の哲学者の元祖.

当時は,近代化が急速に進み,科学が進歩する.

ベルクソンは,都合の良い結果だけ発表し,わからないことにはフタをする,科学の姿勢を批判.

特に,時間の概念に噛み付いた.

1時間は60分 1日は24時間と時間を区切ったことで,人は時間に支配されて窮屈になってしまったと論じた.

ベルクソンは,時間は体感する記憶によって変化していると考え,

あらゆる知覚は すでに記憶なのだ

と言う.

ベルクソンの言う知覚は,暑い,痛いなどの身体の感覚と,ツライ,悲しいなどの心の感情まで含めている.

何かを見た(知覚した)ときに,すでに記憶がその何かに影響を与えている,というようなイメージ.

知覚が過去の記憶に左右される.

記憶を呼び起こすこととは 想像することで 回想することではない

とも言う.

回想することではない とは,単に過去の事実を思い返すことではない ということ.

過去の事実を思い返すたびに知覚も混ぜ合わされる.

記憶は時と共に上塗り,更新され,肥大化する.

これが,記憶を呼び起こすこととは 想像することで 回想することではないということ.

時間と自由 (岩波文庫)

時間と自由 (岩波文庫)


磯野貴理子さんの悩み

「心配しすぎな自分。能天気になりたい」

古代中国の哲学者・孔子(紀元前552-479)の考えが示される.

孔子は,より良い人間関係を築くための道徳的な考え方を説いた.

孔子の教えが儒教

儒教とは,人が生きるために大切な道徳的 教訓.

五徳(仁,義,礼,智,信)を積むことが人間関係を築くために必要だと説いた.

儒教の経典の1つ『論語』には孔子の教えがわかりやすくまとめられている.

孔子の思想は『論語』を通じ2000年以上語り継がれる.

孔子は,いつも3回考えて行動に移す心配性な役人に対し

再びせば 斯れ可なり

と言う.

2回考えればちょうどいい,という意味です.

論語 (岩波文庫 青202-1)

論語 (岩波文庫 青202-1)

NHK「100分de名著」ブックス 孔子 論語

NHK「100分de名著」ブックス 孔子 論語

日本の昭和初期に活躍した九鬼周造(1888-1941)は

すべては偶然に支配されている

と言う.

偶然性の問題 (岩波文庫)

偶然性の問題 (岩波文庫)

NHK「世界の哲学者に人生相談」 第9回「同級生に感じる劣等感をどうにかしたい」

第9回「同級生に感じる劣等感をどうにかしたい」1

「同級生に劣等感 同窓会に行きたくない 」Aさん(40代 女性)

劣等感を人生に前向きに活かすにはどうするか.
劣等感に向き合うといえば,20世紀初頭に活躍した勇気づけの哲学者ルフレッド・アドラー(1870-1937)

アドラーは,30代の頃オーストリアで内科医を営んでいた.
当時,アドラーのもとには近くで働くの遊園地で働くサーカス芸人が患者として訪れていた.

彼らの多くは幼いころ,貧しい生活をおくり,身体が弱かったという.
ここでアドラーはあることに気づく.
彼らは貧しさをバネに体の弱さを克服してハードな仕事をこなしている.
このサーカス芸人のように無意識のうちにマイナスの境遇からプラスの境遇に向かおうとする力,それこそが劣等感だと考えた.

後に精神科医として活躍したアドラー
劣等感を抱く患者に繰り返し伝えた考えがある.
それは
劣等感は誰もが持っている それは健全な向上心のきっかけになる
悪い劣等感は"他者との比較"から生まれる 良い劣等感は"理想の自分"から生まれる
と,アドラーは言う.

アドラーは劣等感に,悪い劣等感と良い劣等感の2種類あると考えた.
アドラーに言わせると,"他者との比較"を止め,"理想の自分"を追求し始めると,良い劣等感になる."他者との比較"から悪い劣等感が、"理想の自分"との比較から良い劣等感が生まれるという. 理想の自分=好きな自分を追求し始めると,良い劣等感が生まれ,それは健全な向上心のきっかけになる.

人生の意味の心理学〈上〉―アドラー・セレクション

人生の意味の心理学〈上〉―アドラー・セレクション

嫌われる勇気

嫌われる勇気


ゲストのお悩みは河北麻友子さんの

「悩みがないのが悩み」

17世紀に活躍した哲学者ブレーズ・パスカル(1623-1662)
偉大な物理学者,数学者でもあり,パスカルの原理を発見・「ヘクトパスカル」の由来.
ただし,18歳の頃からいくつかの病気に悩まされ自分自身も悩みを抱えながら考えて生きてきた人. パスカル
人間が惨めであることを知るのは偉大であることなのであること という.

人間が惨めであることを知る,とは,悩みがある,ということ.
ゆえに,悩みがあるのは偉大なことだとパスカルは考えた.

パスカルは徴税官の仕事が大変だった父の「悩み」に対して,解決するため計算機を発明した. 悩むことはステップアップに繋がるから良いことである.

一方,「幸福論」で有名なアラン(1868-1951)


苦悩はため息である と述べる.

ため息(=苦悩)は,息をためて吐く状態
その状態は正常な状態ではない.
だから,悩むことは良くない.
悩まず前向きに生きましょう,という

パンセ (中公文庫)

パンセ (中公文庫)

幸福論 (岩波文庫)

幸福論 (岩波文庫)

ポジティブ哲学! ―三大幸福論で幸せになる―

ポジティブ哲学! ―三大幸福論で幸せになる―

HNK 世界の哲学者に人生相談 第8回「憎しみを抑えたい」

第8回「憎しみを抑えたい」1

「人を憎んでしまう」どうすればいい? (55歳 女性)

感情を徹底的に分析したフランスの哲学者・デカルト(1596-1650)

デカルトはもともと頭で考えること,つまり理性こそが人間にとって大切だと考えていた.

しかし,デカルトは,戦争に巻き込まれヨーロッパ中を転々としていた悲劇の王女・エリザベトとの往復書簡によって,感情こそが人間にとって大切であり,愛と憎しみが人間にとって最も根本的な感情という考えに至る.

デカルト=エリザベト往復書簡 (講談社学術文庫)

デカルト=エリザベト往復書簡 (講談社学術文庫)

デカルトは,
"憎しみ"と"愛"は表裏であり もともと"同じもの"である
自分の想像に騙されず 憎しみの反対の理由も考えよ
と述べる.

自分の想像に騙されず 憎しみの反対の理由も考えよ とは,なぜあの人はあんなことをするのか?という理由を,違った視点で考えよという意味.


思考実験では,"良心"を考える.

良心 conscience の con は共に science は知る
なので,良心 conscience は,共に知る という意味.
良心は,誰かにこれは良い?と一瞬聞いているのだ.


ゲストのお悩みは池田美優さんの

「母親が子離れしてくれない」

近代ドイツの生の哲学ショーペンハウアー(1788-1860)は
人との距離は近すぎず遠すぎず
という.

『法の哲学』の中で,家族や親子のあり方を説いたドイツのヘーゲル(1770-1831)は
子供は他人にも両親にも物件として所属するものではない
という.

物件とは物のこと.

近代の社会,ヘーゲルの時代は,子供は親の所有物でありで労働力という発想があった.
ヘーゲルは,家族とは社会の一部であり,けして閉じていてはいけない.社会とお互いにつながり,関連しあっていなければならないと考えた.そして,親の使命は子供を独立させ,社会に送り出すことだという.

法の哲学〈1〉 (中公クラシックス)

法の哲学〈1〉 (中公クラシックス)